登山や旅が好きだったこともあり、家の押入れにはバックパックがいくつかぶら下がっています。久しぶりに取り出してみたのですが、なんとバック内部がボロボロに!
カビでも生えたのかと思ったら、なにやら違う。
じつはこれ、バック内部の防水コーティングが劣化し剥がれてしまったいる状態なのだそうです。
洗濯したり、ガムテープを使ったり、色々と除去を試みましたが全部ダメ…。
もう処分するしかないのかと落胆していたところ、一筋の希望が。
どうやら重曹で洗うとベトベトが消える!らしいのです。
試してみたところ、なんとも綺麗になりました。
今回は加水分解した内側ボロボロ状態のバックパックを重曹を使って綺麗にメンテナンスした手順を追ってみます。
バックパックが加水分解!
こちらは15年ほど前、私が初めてバックパック旅をした時の思い出の品。
「渋い緑」に一目惚れ。「日本人だったら、やっぱりモンベルだよな」ということで選んだのがコレ。1年近くアジアや中東を旅した思い入れのあるバックパックです。
海外旅の後もキャンプ登山やちょっとした国内旅行にもよく活躍していました。シンプルな構造のため持ちが良く、割と乱雑に扱っていましたが破れたり壊れたりといったことは皆無。実に頼もしい相棒でしたが、新しいバックパックを購入したのを機に現役を退きました。10年ほど前に引退し押入れで余生を過ごしていましたが、昨今の災害を教訓に備蓄用防災バックとして再度活躍してもらおうと思ったのです。
しかし、いざ口を開いてみたところ、中が白い!
カビでも生えたのかな?と思ってよくみたところ、どうもカビではなさそう。
よくみると何か「剥がれている」ような状態。内側がボロボロ!
触ってみたら、白い粉が手に付着します。所によっては湿っぽくてベトベトしている箇所もあります。
なんだコレは!
ベトベトの正体は「防水コーティング層」
調べたところ、このボロボロベトベトの正体はどうやら防水コーティング層とのこと。
バックパック内部は防水性を高めるためにポリウレタン(PU)をコートしていることが多いようです。街中で見かけるようなリュックにはあまり見受けられませんが、アウトドアで使用する登山用バックパック内側には大抵この防水コーティングが施されています。
バックパック以外でも、テントやジャケットなどナイロン素材のアイテムの内側や縫い目などには防水のコーティングが施されていることが多いようです。私が使用しているテントにも同様のボロボロが見受けられました。テントの場合はシームテープと呼ばれる生地と生地の接合部分(折って縫い合わせている部分)に貼られる防水テープがありそれがよく経年劣化により加水分解を起こしボロボロと剥がれることがあります。テントやタープの場合はこの部分だけを「剥がし」て「貼る」なので結構簡単。しかも結構簡単に剥がれて残骸もガムテープなどで簡単に除去できたのですが、今回のバックパック内部は少々勝手が違うようでした。
加水分解とは?原因は?
前述のとおり、多くのアウトドアギアの防水コーティングにはポリウレタン素材を利用しています。
劣化の原因は、水や油、紫外線や熱など様々な要因があります。
ポリウレタンは合成された時点から既に劣化が発生します。
劣化する速度は環境により違い、上記のような要因がある場合にはその速度も早くなります。
上記要因の一つ水が引き起こすのが加水分解と呼ばれる現象。
加水分解は、水分と反応して起こる現象でポリウレタンの強度が下がることが劣化へと繋がります。日本のように湿度の高い環境下では一番の劣化要因となる現象ではないかと思います。
また、ポリウレタンは防水性以外にも軽いという特性があります。
多くの登山靴ではアウトソール(靴底)とインソール(足裏)の間に入る部分「ミッドソール」にこのポリウレタン素材が使われています。また、ポリウレタン素材の軽さをソールに活かした軽量トレッキングシューズなどもあります。ポリウレタンは軽量性の他、適度にクッション性が保たれるため、このような特性を活かしソールの素材として利用されているのですが、その登山靴でもポリウレタンの加水分解による劣化が問題を引き起こすケースもあります。
ポリウレタンが採用されいるミッドソールは、アウトソールとインソールを繋ぐ素材のため、ここが劣化するとソールの分離が起こります。
しばらく履いていなかった登山靴で山に出かけたところ、「登山の途中で靴底がベロリと剥がれてしまった!」なんてことがよく起こるそうです。
そのため最近ではこういった事故を防ぐために、ミッドソールに新素材のEVAを採用する登山靴も増えてきたそうです。
ガムテープでは剥がせなかった…
日焼けした肌みたいで、なんだかペロリと剥がれそう…。
テントやタープのシームテープは割と簡単に剥がすことができたので、今回のバックパックもイケるかな?と思い、皮を剥がす要領でセロテープを試してみました。
ちなみに写真は一緒に押入れから引っ張り出してきたカリマーのバックパック。こちらも同じく加水分解が進んだ症状。
セロテープをぺたりと貼り付けて…
あれ?思ってたのと違う。
あまり剥がれません。
ならばより粘着力の強い布テープで!
これなら一気に剥がれるかと。
思いきや、期待外れ。
結局これくらいが限界。
しかも剥がした場所はまだベタベタしていて不快。
加水分解したポリウレタンがまだ生地にしっかりとこびりついているのです。
重曹でベトベトを除去!
調べたところ、どうやら加水分解した防水コート(ポリウレタン)には重曹が良いらしい。
加水分解してベトベトになった防水コートは酸性のため、アルカリ性である重曹を付けることで中和し落としやすくなるのだそうです。
なんだ、台所汚れを落とす要領で重曹を使えば良いのですね。
早速シンクの下から重曹を取り出し作業を進めたいところですが、今回の相手はバックパック。それなりの大きさと複雑な形状であるため、このままでは重曹を付けづらい。
まずは分解してコンパクトに。
その上で一晩重曹を入れた湯船に浸けて中和。
ゴシゴシこすって落とし、洗濯して乾燥!
この流れでいきたいと思います。
前準備・洗いやすいように外せるパーツは分解
洗濯をしやすくするためにできるだけシンプルな形に分解します。
とはいっても、モンベル・GRANTE PACK40の場合、取り外して分解できるパーツは少なく、既にシンプル。
一緒に洗濯した別のバックパック(カリマー・Filyer50-75)は機能的ゆえ取り外すパーツも沢山あって大変でした…。カリマーの取り外しについては別の機会に記事にしたいと思います。
取り外しできるのは、背中の板のみ。
骨が抜けてフニャ〜っとなってしまいました。
これなら洗いやすそう。
重曹風呂に一晩漬ける
入浴後の暖かい湯船に重曹を溶かしバックパックを投入します。
重曹の量を節約したいのでお湯は少し抜いて減らしておきます。
使用した重曹の量は適当でしたが、膝下くらいの湯船に300gくらい使ったかと思います。
バックパック内に空気がたまらないようにしっかりと浸けます。
空気を抜いても浮かんでしまうので、風呂の椅子や蓋などを乗せてお湯にひたるように工夫します。
このまま一晩浸けおきしました。
金ダワシでゴシゴシ
翌朝風呂をのぞいていると変化にびっくり。
防水コートされていたと思われる部分が白く浮き上がってきています。
場所によってはベロンと剥がれていたり。
下地の素材によってはペロリと綺麗に剥がれてしまう箇所もあります。
しかしそれでもしぶとく残っている場所にはこれ。
100均で売っているステンレスたわし。
湯船に浸けながらゴシゴシとこすると、簡単に剥がれていきます。
縫い目のある角の方は少し洗いにくく洗い残しが発生しやすいので注意。
洗い終わった湯船はご覧の通り。
うわぁ汚い…。
汚れを落として乾燥
防水コートを落とした後は洗濯して乾燥。
ただ、そのまま洗濯機に入れてしまうと妻に叱られそうなので、もう一度お湯を張り残った汚れを流します。バックパックに付いた頑固な汚れや匂いなども取れたらいいなと思ったので、洗濯も兼ねて酵素洗剤を使用。湯に溶かして1時間ほど浸し、その後ジャバジャバと洗い流してからいざ洗濯機へ。
洗剤を入れ(さっぱりしたいので柔軟剤は使いません)脱水まで終わらせたら乾燥。
じつは私、曇りの日に洗濯してしまい乾燥に失敗し2度洗濯しております。
ショルダーハーネスなどはクッションの厚みがあるので乾きにくいです。
天気の良い日を狙い短時間でしっかりと乾燥させた方が気持ちよく仕上がります。
乾燥したバックパックはご覧の通り。
ベタベタだった防水コートが取れ、サッパリと素の生地の状態に。
しかも見違えるほど綺麗に。
ベタつきもなくなり、サラサラと気持ち良い。
後は洗濯前に取り外したパーツを付け直せば完了。
まとめ
どうにも取り除けなかったベトベトが重曹を使えば綺麗になることがわかりました。
諦めて廃棄してしまおうかと思っていましたが、試してみて良かったです。
同じ様な状態のバックパックを持っている方も多いと思いますが、手間でないようであれば捨てる前に一度試してみることをオススメします。
ちなみに加水分解は湿気が原因で起こることが多いようです。
日本のように過湿状態が発生しやすい環境では、保管しているバックパック内に湿気取り剤や新聞紙などを入れておくなどして湿度の管理を行うと加水分解の発生を抑えることもできそうです。
またアウトドアで使用したバックパックは雨で濡れてしまったり、気がつかないけれど湿気を含んでいたりするものです。
疲れて帰宅するかもしれませんが、できることならば天日に干して湿気を取り除いてから収納するように心がけたいですね。
天日干しの際には防水コーティングされているバック内部をしっかり乾かすように。