写真プリントをするのであれば、A4の用紙がプリントできる家庭用プリンターから一歩踏み出しプロも使用する大判プリンターを検討してみてはいかがでしょうか?
A3やA2サイズまでプリントできるインクジェットプリンターであれば、作品の幅がグンと広がります。
高画質な写真用インクジェットプリンターで現在主流となっているのはが、キヤノンとエプソンの機種。今回はその最新機種である、PRO-G1、PRO-S1、SC-PX1V、SC-PX1VLをスペック比較してみました。
従来(旧型)機種からの改良点なども踏まえて紹介したいと思います。
後半は「自分の作風にはどんなプリンタが合うのか?」プリンタ選びに迷ったときの参考に特徴と向き不向きなどを紹介しています。
写真作品の仕事に携わっていた私なりに、実際の使い勝手や色の再現性の違い、また使い方に合ったおすすめの機種を考えてみたいと思います。
今回の対象機種(2021年最新機種)
Canon
PRO-G1(顔料インク・A3ノビ)
PRO-S1(染料インク・A3ノビ)
PRO-1000(顔料インク・A2ノビ)
EPSON
SC-PX1V(顔料インク・A3ノビ)
SC-PX1VL(顔料インク・A2ノビ)
まだ進化するのか…恐るべき2大巨頭。
さて、つい最近まで「PRO-10S」や「5VⅡ」などが界隈を席巻していた時代かと思いきや、気がつくとまた最新機種が登場だそうです。
キヤノンからは「PRO-G1」と「PRO-S1」のA3モデル。
エプソンからは「SC-PX1V」と「SC-PX1VL」というA3とA2モデルが登場しています。
個人的には旧機種でも十分満足のいくもので、正直「もうこれで頭打ちかな」くらいに考えていたところはありました。これ以上何を望めば良いのかと疑問を感じずにはいられないところですが、いったい何が変わったと言うのでしょうか。
プリンタの改良点としては「インク」と「構造」が大きなものを占めます。
特に濃度や発色に関しては「インク」自体の性能が大きく関わってくるので、各社ともインクの開発には注力しているようです。もちろん今回登場した新機種にも新たなインクが使われたようすです。
どうやら、黒が更に「濃く」、色域も広がり更に「鮮やかに」、そして機能の変更・追加で更に「使いやすく」なっているみたいですよ。
【インクの進化】濃く鮮やかな発色
一体どこまで進化するのでしょう。
毎回新機種が登場するたびに、「黒が濃く」「色域が広がった」と謳い文句が入ります。この領域に関しては、そろそろ頭打ちではないかと思うのですが、今回も更にインクの進化が止まらないようです。
(エプソン)黒と青が進化!
ライトグレーインクのオーバーコートとは、暗部にライトグレーインクを上塗りすることで、着弾したインクの段差を少なくし、表面の光沢を最適化する機能。これにより重厚感のある深い「黒」を表現できる他、反射光の違いによって本来とは違った色味が付いて見える「ブロンズ現象」を抑制することができます。
さらに着弾インクのサイズも微小化。最小1.5plという細かなインクを吹き付けるため印字表面の平滑性が向上したようです。鏡のように真っ平らであれば本来の色をそのまま見ることが可能です。ただインクは丸い粒なのでよく見ると凸凹しています。この平滑性というのが結構重要なことで、小さな粒のインクで凹みを埋めることで反射が綺麗に目に入りインクが本来持つ深い色味に近い色を見ることが可能になる訳です。
また、色味系に関してもう1点。
ディープブルーインクを搭載し、青系の色域を大幅に拡大。再現の難しかったブルー・バイオレット領域を、豊かで繊細な階調可能になったのも嬉しいポイント。
(キヤノン)黒のキヤノンというほど濃い黒が健在
やはりキヤノンといったら、濃い黒!
これは相変わらずブレていないようで、顔料プリンタ(PRO-G1)も染料プリンタ(PRO-S1)も更に磨きをかけて黒く濃くなっているみたいです。
注目したいのは、インクジェットプリンターでは最高レベルの濃度の黒を目指したという顔料プリンタ(PRO-G1)搭載の新「マットブラック」。もともとフォトブラックを使用する光沢系の用紙と違い、濃度を出しにくいマット系用紙ですが、今回のインクはこの領域を改革。新マットブラックインクは、重厚感のある黒とその暗部階調性を広げただけでなく、高濃度の黒が作品を深く引き締めることで明暗の差を更に生み出し表現色域を広げたように感じます。またカラーインクと組み合せることで、レッド・グリーン領域の暗部階調性までもを豊かにしているとは!
底を知らぬ黒の深みへと沈み続ける、恐るべきキヤノンの強い意思を感じますね。これはすごい…。
また『鮮烈の黒』と銘打った染料プリンタのPRO-S1は搭載インク(8色)自体を一から新開発。高濃度の「黒」で暗部のディテールまで忠実に再現可能とのこと。
【インクの進化】さらに広色域に
(エプソン)進化したUltraChrome K3Xインク
ディープブルーインクを搭載することで、青の色域が大幅に拡大。再現が難しかったブルーバイオレッド系の色域を拡張することで鮮やかで階調性の豊かなグラデーションを表現できるようになったみたいです。
(キヤノン)顔料PRO-G1には、10色LUCIA PROインク
出典:Canon PRO-G1
顔料インクとクロマオプティマイザーによる、10色「LUCIA PROインク」を搭載した、PRO-G1。中でもクロマオプティマイザーによる効果は大きく、光沢感のムラが埋まることで特に光沢系の用紙にはその恩恵が還元され作品をより深く、豊かな色味に仕上げてくれます。
(キヤノン)染料PRO-S1は、8色染料インクを新開発
出典:Canon PRO-S1
従来機のPRO-100Sからインクを刷新し新たに開発した新インクを採用。
色域、黒濃度、暗部色の再現領域を拡大。より透明感のある鮮やかな色彩と繊細なグラデーションで、深みのある色再現が可能になりました。エプソンに対してこちらは特に赤の発色深度が深くなったようです。
(キヤノン)染料インクの弱点を克服!
出典:Canon PRO-S1
保存性を高めた「ChromaLife100+」
また、保存面では顔料インクに劣ると言われる染料インク。プロ向けの染料プリンタを出し続けているだけあり、このあたりも向上しているようです。特定条件下ではありますが、耐光性約50年、耐ガス性(オゾンのみ)約10年、アルバム保存約200年が可能ということで、プリント後の品質についても注目したいところ。
「染料インクはアルバム保存には向いていない」なんて過去のものとなる日が近いのかもしれません。キヤノンの染料インクプリンターは今後も注目していきたいですね。
プリント後の色定着が早くなった!
染み込んで乾くというのが染料プリンタの特徴。その弱点と言われるのが色の定着時間。一般的に色を確認するまでに時間がかかると言われている染料インクですが、PRO-S1は、印刷直後からすでに色の隣接比較で、わずかに色差が感じられる程度で、その後急速に安定していきます。染料インクであってもスムーズな色確認が可能ということで、今まで難しかったレタッチ作業がしやすくなってきたようではあります…。
【機能の進化】
(エプソン)嬉しいブラックインク切替え不要!
個人的に気がかりだった機能面の大問題。
それが、エプソンプリンターのブラックインク切替え。
これが今回リリースされたSC-PX1V(L)からは、すべてのインクを同時装着し切替え不要で使用可能に解消されたと言うのです!
これは嬉しい。
先代SC-PX5V(Ⅱ)まではフォトブラックとマットブラックを「同時に装着」まではできましたが、小型化ゆえノズルを共有する構造であったため、どうしても「切替え動作が必要」でした。
この切替えには、時間も要すほかノズル内に残った前のブラックインクを吐き出して捨ててしまうためインク消耗が多かったのです。光沢紙とマット紙を両方使う人には負担の大きな構造で、実際に私も仕事の時にはこの切替えロスをなくすために作品のプリント順を決めて出来るだけ切替えを減らすよう心がけていました。「思った時に好きな用紙をプリントできない」というのは案外ストレスだったりします。この点はキヤノンの先代機種との比較デメリットではあった訳です。
それゆえ、この構造変更はかなり嬉しいんですよ!
(エプソン)のぞき窓がイイ、それとギザローラ痕も軽減
小さな事ですが、意外と嬉しい構造。
プリンター上部に透明な天窓が付いておりプリントの状態がリアルタイムに目視できるようになりました。これ大した構造に思えないかもしれませんが、意外と大きい。
大判プリンタはそれなりに大きな用紙をプリントするので、1枚の失敗によるロスが結構でかい訳です。
「用紙の表裏を間違えた!」
「ノズルが詰まっていた!」
「用紙が斜めに搬送されてしまった!」
「プリント設定を間違えていた!」
プリント時間、インク代、用紙代といったプリントロスは、それぞれに負担が出てくるので失敗には早く気がつきたいところ。積み重なれば大きなコスパ変動になるかもしれませんね。
それからギザローラー。
これも小さな変更ですが、じつは大きい。
用紙を搬送するギザギザのローラー、それが「ギザローラー」。
光沢の強い用紙に黒ベタなどシャドウ画像をプリントすると、ギザギザの搬送ローラー痕がつくという現象がありました。反射によりこのギザローラー痕が目立つのです。
今回のSC-PX1V(L)からはギザローラーの数を増やし紙にかかる圧を軽減させることでローラー痕を減少させたようです。これも嬉しい改良。
(キヤノン)プリントの失敗を防止
出典:Canon PRO-G1
こちらもプリントロスに関する抑止機能。
意外と「斜めに給紙されてしまった」なんて事がよく起こります。
フチ(余白)なしのプリントする時にはそれほど気にならないかもしれませんが、フチをつけた場合斜めになると結構目立ちます。地平線や構造物など水平垂直が入る被写体の場合これがまた気になったりします。
斜行補正機構
上トレイ・手差しトレイからの給紙において、斜めに入った用紙をまっすぐに補正する機構を搭載しました。厚手の紙など、さまざまな用紙で安定した出力を実現します。斜行補正があると安心してプリントができますね。
サイドガイド・スライド機構
上トレイ・手差しトレイから用紙を給紙し斜行補正動作を行った後、用紙側面との隙間を確保して印刷を開始。
印刷中に用紙側面にかかる抵抗を緩和し、スムーズな紙送りが可能です。
(エプソン)置くだけロール紙セットが簡単可能
こちらも小さいけど嬉しい変更点。
一般的なユーザーがロール紙を使う機会って稀ですよね。
カット紙を使用することが主かと思いますが、ロール紙を使えば作品の幅が更にグンと広がります。規格から外れた長尺物の作品は作品形態を問われないため新鮮で人を惹きつけるインパクトもあるので一度は挑戦してみたいものです。ロール1本を買うと高く感じますが作品を多くプリントをする際にはコスパがよかったりします。
ただ初めてだと敷居が高いように思われ「ロール紙を使うのはちょっと…」と、抵抗を感じてしまう人も多いはず。
従来まではスピンドルと呼ばれるベンチプレスのような形状をしたアダプタが必要でした。普段使用しない人には脱着が面倒な上、アダプタの保管も煩わしかったりして敬遠される要因の一つでもあった訳です。
新機構からはプリンター背面のカセットを引き出してそこの乗せるだけでセットか完了というシンプルな構造になりました。あとはロールを1本購入して後ろにポンとセットするだけ。手が出しやすくなった訳ですので、是非新しい世界を体感してみるのもの面白いと思います。
小型化が半端ない!
エプソン、キヤノンともに従来機からの小型化に成功。
このサイズ比率が結構えぐい。
キヤノンPRO-G1/PRO-S1は従来機PRO-10S/PRO-100Sと比べ体積比85%の小型化。エプソンSC-PX1Vに至っては従来機従来機SC-PX5VIIと比べ体積比68%の小型化というのは驚き!
A3プリンタが少し前の家庭用A4プリンターのサイズまで小型化したようなものですからそのサイズ感には度肝を抜かれます。
そのほか日々スタイリッシュ感を増す外見も特筆すべき点かと。
キヤノンPRO-G1/PRO-S1は天面にシボ加工を施し、マットな質感で高級感を演出。エプソンSC-PX1V(L)の背面トレーは、細い縦格子ルーバーのような和モダンデザイン。もうメカというよりも堂々たるインテリアとしての存在感ですね。
さて、新機種機能面での比較はこの辺りまで。
さてここからはどやって自分に合うプリンターを選択するかです。
さあ、どれを選ぶ?
プリンターを買うということは、写真をプリントし見る(見せる)ということです。最終的にいったい「どのように見せたいのか」をイメージし、その表現に近づけられる機種を選びたいですね。
まずは何が違うのかを知っておきたいところ。
それぞれの機種に特性はありますので、
そこを踏まえた上で自分の作品イメージを叶えてくれる機種を選ぶようにすれば、しっくりとくるのではないかと思います。
自分の作品にはどんなプリンタがマッチするのか。
それではプリンターの特徴を比較して選んでみたいと思います。
インクの違いで選ぶ
- インク種類(染料or顔料)
- インク数(グレー系、ライト系、特色)
- クロムオプティマイザ(グロスオプティマイザ)
写真プリントは紙などのメディアにプリントし光源下で鑑賞をします。
デジタル画面上ではRGBの光を自ら発しているのに対し、写真は光の反射によって色を認識し見ることができます。
そのためプリントされた写真は環境下で見え方も変わってきますし、同じ環境下であっても光を受ける紙やインクの種類によっても変化してきます。
このようにインクジェット写真の見え方は様々な要素の組み合わせによって成り立っています。最終的には環境、紙、インクそれぞれの特性について理解することでインクジェット写真の再現性についての理解が深まると私は考えます。
今回は、まずはインクによる再現性の違いを比べてみましょう。
インク種類(染料インクと顔料インクの違い)
インクには染料インクと顔料インクが存在します。
一般的に染料インクは発色性や光沢感があり、見た目が綺麗に仕上がると言われています。
一方顔料インクは見た目のインパクトは染料に劣りますが、色の安定性や保存の面において優位があると言われています。そのためプロカメラマンやプリンター(プリントをする人)の多くは顔料インクのプリンターを使用しています。
イメージとしては、
染料インクは、溶剤に溶けている着色剤が「紙に浸透する」
顔料インクは、溶剤に混ぜた細かな色粒が「紙に付着する」
といった感じでしょうか。
染料インクの特徴
一般的に広く販売されている家庭用のプリンターはほぼこの染料インクを使用しています。
メリットは発色が良く再現性が良いという点。
インクが紙の受容層に「染込む」ため、光沢紙の紙面をフラットな状態で保ち紙本来の光沢感がいかせます。
また、浸透する性質から「プリント後に触ってかすれてしまった」なんてことが起こりにくいです。
使い勝手の面では、ノズルつまりが発生しにくいのも大きな特徴です。
デメリットとしては、
水による滲みや、太陽光・オゾンによる色あせが起こりやすい点です。
また、色の変動が大きいということ。
つまりレタッチ後にすぐに色の確認補正ができないという点です。
染料インクは紙に染込んだ後、完全に乾燥するまでの間は色が変化し続けています。
プリント直後に見た色合いと、1時間後に見た色合いとでは全く違うことがよくあります。
常温で完全に色が落ち着くまでは2日以上はかかります。
しっかりと乾燥させたプリントはプリント直後と比べても明らかに濃く鮮やかな色合いになっています。
「染料は黒が締まらない」という声も聞きますが、この乾燥がしっかりとできていない直後の写真を比較していることも1つの原因ではと考えています。
またプリント直後の写真はプリント面を露出もしくは普通紙などで覆い、水分を蒸発できる状況に保管しておくことが理想です。
現在はRC紙(レジンコート紙)の用紙が大半ですので、プリント後の写真同士を重ねている場合、水分の逃げ場が確保できず十分な乾燥が行えない場合がありますので乾燥方法については注意が必要です。
メリット
- 発色が良い(彩度が高く顔料では再現できない高彩度の色域を再現可能)
- 黒の締まりが良い
- 光沢感がある(インクは受容層内部へ滲みこむ為、光沢紙ではフラットな紙面を維持でき紙本来の光沢感を発揮可能)特に鏡面光沢・高光沢紙で最適。
- 用紙のテクスチャーを邪魔しない
- プリント速度が早い
デメリット
- 保存性(退色性)において顔料インクに劣る
- 色が落ち着くまで時間がかかる(インクが乾くまでに時間を要す)
- マット系用紙では色沈みする(光沢紙と比べ鮮やかな色が出ない)
向いている写真
- 湖面や水滴などの光沢感を光沢紙で再現したい写真
- 透明感のある水中写真
- 夜景などのコントラストのある写真
- 青い海やビビットな色彩を高彩度の発色のまま再現したい写真
- 個人的にはシャープなもの繊細なもの優しいものに使う事が多い
顔料インクの特徴
保存性が良いのが一番の特徴です。
銀塩プリントやプラチナプリントは実際に100年、500年と保存の実績が残っています。
インクジェットプリントは普及してまだ30年と年数が浅いため、保存性においては銀塩やプラチナプのような確固たる実績による保証がありません。
しかし各メーカでは日々保存性のあるインクを開発し、加速実験によってその保証を高めています。その結果が今日の顔料インクの保存性へとつながっています。
国内ではまだ件数が少ないですが、海外ではインクジェットプリントの写真販売は多くなっています。それだけ顔料インクの保存性能が上がり信頼が出てきた証拠です。
また、プリント後の色の変動が少ないため色合わせやレタッチがしやすいという利点もあります。作品を作り込む際、プリント後にすぐに色の確認をしたいですよね。
顔料インクは紙に染込むと言うよりは定着するため、紙の種類を選ばずにプリント可能です。ただし吸収性のない安価な用紙の場合には強くこすったりすると剥がれてしまう可能性があります。またインクに付着する性質上、インク自体の光沢感が表現されるとう特性があります。鏡面光沢や高光沢紙などインクの光沢感よりも用紙の光沢感が勝る場合、インクの乗った場所とそうでない場所とに光沢感のムラが生じる事もあります。
メリット
- 保存性(退色性)に優れる
- 環境下による色の見え方の違いが出にくい
- 用紙種類の差によるにじみの発生が少ない
- 用紙を選ばない(色の再現が安定している)
- 色に落ち着きがある
- 階調豊かなモノクロ再現
- プリント後の色の変化が少なく、レタッチなど色の確認作業が容易・スムーズ
デメリット
- 耐擦性が低い(安価用紙では擦れによるインク剥がれ・擦れがおこる)
- プリント速度が遅い
- 光沢感はインク自体の光沢感(高光沢用紙にプリントするとインクの光沢が劣りムラが起こる可能性がある)
向いている写真
- モノクロ写真
- 販売目的や長期展示・保管を要する写真
- レタッチなど色の確認を必要とし、作品を作り込んでいく写真
- マット系の用紙を使う場合は色味が安定している
- 個人的には「落ち着いた雰囲気」「力強さ」などを表現したいときに
インク数
やはり、インク数が多いほど色の再現性は良くなります。
グレー系やライト系、オレンジやブルーなどの補完色インクはきれいなグラデーションを可能にし階調の再現性を向上させることができます。
またレッドやブルーなどの特色インクは通常のCMYK系インクだけでは難しい色域を補完しより深く鮮やかな再現が可能になります。
またプリンターの機種によって搭載するインク色は若干違い、モノクロを得意とする機種、カラーを得意とする機種などを選べます。
たとえば、鮮やかなカラー表現を得意とするCanon PRO-S1(染料プリンタ)やEPSON SC-PX7VⅡ(顔料プリンタ)など。
カラーやモノクロの階調表現を得意とするCanon PRO-G1、PRO-1000やSC-PX1V、SC-PX1VLなど。
クロムオプティマイザー(グロスオプティマイザ)
Canonならばクロマオプティマイザー(CO)、EPSONならばグロスオプティマイザ(GO)と呼ばれる透明な樹脂コーティングインクのことです。エプソンのグロスオプティマイザインクは現在SC-PX7VⅡのみに搭載ですが、SC-PX1VなどのUltraChrome K3Xインクではインク自体に透明樹脂コーティングする事でそのグロスコーティングの役割を果たしているようです。
さて、optimize(オプティマイズ)とは「良さを最大限に引き出す」ことです。
クロム(クロマ)オプティマイザインクとは色味を最大限に引き出すインクのことです。
原理としては顔料インクの乗っている部分とそうでない部分にできる凸凹を埋め平滑にすることで、光の乱反射を抑えることが可能になります。
乱反射がないということは、プリントそのものの光がきれいに目に返ってくるということで、インク自体が持つの本来の色味が最大限に引き出されるというわけです。
通常のインクジェットプリンターには白インクというものが存在しないので、ハイライト部分はインクが乗りません。ハイライト部分というのは紙白(紙自体の色)がそれを表現しているため、インクが載っている部分とそうでない紙白の部分との間で光沢感が違い見え方に違和感を感じることがありましたが、オプティマイザインクで全面的に補完されることによりその見え方の違和感が埋まります。
一方のデメリットとしては、インクが増えるためコストが上がります。
またハイライトや白色部分が多い画像の場合、通常ならば使用しない紙白(インクの載らない部分)にもグロスコーティングしますので、プリント時間が余計にかかります。ただしオプティマイザインクの使用はプリンタドライバの設定でON/OFFが選べるので不要ならば使わないことも可能です。
まとめると以下のような利点があります。
メリット
- 鮮やかさが増す
- 黒の濃度が上がる
- 平滑性が上がる(光沢感が増す)
- 保存性が上がる
- インクの載っている部分とそうでない部分との光沢感の差がでない
デメリット
- インクコストが上がる
- プリント時間が長くなる
- 紙本来の素材感は変化する
- マット用紙には向いていない(使用できない)
インク自体の性能
それぞの機種は旧モデルと比べ遥かにインク自体の性能も向上しています。
インク自体の性能が向上したことで、黒濃度や再現色域の拡張など色自体の改良も見られるようです。
また色インクを補完する形で一部機種に採用されているクロマオプティマイザー(グロスオプティマイザ)やインク自体に施される樹脂コーティングと相まって、濃度や光沢感などといった「プリントの見え方」にも変化がみられるようです。
特にモノクロ画像などでは作品展示の際に気になっていたブロンジング現象。
見る角度や光の具合で色が変化して見えたり、モノクロ画像にあるはずのない「色」が見えてしまう現象です。
これもクロマオプティマイザー(グロスオプティマイザや樹脂コーティングされたインク)の効果で、軽減されるようです。作業場でプリントした作品が、実際に展示されるギャラリーに持っていくと全然違った雰囲気になっているなんてことはよくありました。自分の作業場の照明とギャラリーの照明の種類が違ったり、テラス角度や見る角度が違ったりすることなどが要因です。インク性能の進化でこのあたりの問題が保管されたのは嬉しいですね。どのような光源下でも影響されにくくなったことは、作家にとってはありがたい性能です。
簡単にまとめますと、
- 黒インクの濃度向上
- マゼンタインクの色域拡張
- 滑らかなグラデーション再現
- ブロンジングの低減
などなど。
実際に開発をしているわけではありませんので、インク自体の詳しいことはそれ程わかりませんが、どちらのメーカーの機種もプロが納得する素晴らしい性能を持ち合わせているのは確かなことのようです。
エプソン、キヤノンの両サイトでもその性能の向上についてはしっかりと説明がされていますのでそちらを閲覧していただければわかりやすいと思います。
EPSON 特設サイト
Canon 特設サイト
プリント可能サイズで選ぶ
- A3ノビ (329×483mm)
- A2ノビ (432×4610mm)
- ロール A4幅(210mm)A3ノビ幅(329mm)A2ノビ幅(431.8mm)
サイズ選択は3つ。
A3ノビかA2ノビかロールなります。
A3サイズのプリントしかしないよというのであればA3ノビ対応のプリンターで大丈夫ですが、A2ノビやロール対応のプリンタであればサイズ下のプリントが全て対応可能です。
一つ注意が必要なのはプリント後の加工という点。
プリントするだけならA3ノビやA2ノビギリギリまでプリントが可能ですが、マウントや額装などの種類によっては余白などでプリントサイズより余分に紙幅が必要となることもあります。
仕上がりをA3サイズで加工する場合、A3サイズぴったりでは余白が足りなのでA3ノビサイズの用紙を使うことになります。ノビ分の余白があれば大抵の加工には対応できますが、例えば「側面まで見せる」ような作品では厚みのある木製パネルに巻きつけて加工をします。そうすると結構な余白が必要となる場合があります。こうなると大きなサイズがプリントできるプリンタを使用するか、作品自体を小さいくしなくてはなりません。やはり大は小を兼ねるということで、予算やスペースに余裕があるのであれば大きいプリンターに越したことはないです。
EPSONの機種はロール紙対応です。新機種SC-PX1VとSC-PX1VLは従来よりもさらに簡単にロール紙をセットでき長尺物のプリントが可能です。A2ノビ対応プリンタなら17インチ(432mm幅)のロールがセットできるので作品の表現の幅もぐんと広がります。
操作性の違いで選ぶ
自分が使うのならば使い勝手が良いものがいいですよね。
- ブラックインク切替え
- 用紙ロス対策
従来機種まではブラックインクの切替えの必要のなかったキヤノンに有利な点がありましが、エプソンの最新機種ではこれも改善されたため両者互角。
光沢紙もマット紙も気軽に両方使えます。
あとは用紙ロス対策。
エプソンは用紙のプリント確認が上から見えるので安心です。
キヤノンは傾斜補正機能が付いているのでおまかせ安心。
ううむ、どちらも捨て難いですね。
総合評価
普段は光沢紙を使い、展示や保存期間を気にせずに、光沢感や透明感・とにかく濃い黒・鮮やかな発色を出したインパクトのあるもの、とにかくプリントスピードが速いのが良い!という場合には、染料プリンターがオススメです。
しかし、個人的にはどんなプリントも可能な顔料プリンターがオススメではあります。
ちなみにエプソンの場合はプロセレクションに染料プリンタはラインアップしていませんので必然的に選択肢はなくなります。
圧倒的に保存に優れているのは顔料プリンターです。
また、染料プリンターに敵わないとされていた透明感や黒濃度ですが、インクの進化や「クロマオプティマイザー(クロムオプィマイザ)」インクの採用によってだいぶ補完されていますし、用紙表面の平滑性を高めることで、光沢の均一性と暗部の引き締めが格段に高まっています。また再現色域についても、特に搭載インク数の多い大判機種では染料プリンターに劣らぬ再現領域を可能にしています。
強いこだわりがなければ、染料プリンタを選ぶこともないのではないのかと感じます。
個人的にはCanon PRO-G1が欲しい
個人的にはCanon PRO-G1が欲しいです。
光沢紙よりも半光沢紙やマット紙が好きな私。
そのため紙を選ばない顔料プリンターのほうが使いやすかったりします。
そして何よりも「黒」。
キヤノンといえばこの黒が濃いというのが私の個人的な感想です。
販売店などに置いてある印字サンプルなどを見ても相変わらず濃いなと思ってしまいます。
ただ実際の見え方や感じ方は個人差があると考えていますので、やはりそこは実際に足を運んで自分の目で確かめた方が良いと思います。
それとプリント速度。
昔のプリンタを知っている私にとってCanonの顔料プリンターはプリント速度が遅い!というイメージがとても強かったのです。2代前の機種PIXUS Pro9500 MarkIIというプリンター。昔使用していたのですが、これがとにかくプリント速度が遅かったのです。
1代前のPRO-10シリーズ以降はその速度も改善され、EPSONの同位機種と比べてもさほど気にならないレベルに。そしてPRO-G1はA3ノビ(フチあり)のカラープリントが約2分50秒!ストレスフルでいいですね。と言うわけで、今買えるならば「PRO-G1」が欲しいですね…あくまで個人意見です。
まとめ
個人的な考えをまとめてみましたが、色や質感の好みや感じ方は人それぞれ。
実際に出力物を見て自分の目で見極めるのが一番です。
ギャラリーの作品やプリンター売り場でプリント見本を見比べたりするほか、メーカーのショールームやデモスペースへ行って実際に機種を試してみたり、出力物を見てしっくりとくる機種を選ぶのがいいと思います。
また、プリントサービスを行う工房でプリントを依頼して仕上がりを確かめるのも一つ。このようなプリントラボでは上記のプリンターを使用していることが多いので、実際に問い合わせをして検討中のプリンタを使用しているか問い合わせてから利用してプリントの仕上がりを確かめると言うのも一手。
参考に現在利用できるショールムーやサービスの一部を紹介しますのでご検討を。
ギャラリー&ショールーム
各メーカーのギャラリーやショールーム。
実際に足を運んで自分の目で確認するのが一番ですね。
Canon
EPSON
プリントラボ・プリントサービス
それでも、
「ちょっと価格が高くてプリンターに手が出ない」
「自分できれいにプリントする自信がない」
「プリントと一緒にパネル張りや額装などの加工もしたい」
そんな人は、プリントラボやプリントサービスを利用するのもひとつの手段です。
なかにはプリントから額装までできるサービスを提供するところもあります。
エプサイト・プライベートラボ
予約制で最新機種が自由に使用できるエプソンのプリントラボ。
カラーマネジメントの整ったプリント環境で大判のプリンターまで使用できます。
ピクトリコプリント工房
プロも利用するハイクオリティな写真プリントサービス。
プリントできる用紙はピクトリコの用紙に限定されますが、高画質インクジェット用紙メーカだけにラインアップは豊富。鏡面光沢からマット系の用紙まで、質感や紙白の違う十数種類の用紙からプリントを選べます。
加工は裏打ちから木製パネルや額装まで、こちらも豊富なバリエーション。
プリントだけならA4サイズで726円から高画質でハイクオリティーなプロのプリントを体験できます。