九龍城って聞いたことありますか?
「東洋の魔窟」「アジアンカオス」などと称された、かつて香港に実在した巨大なスラム街「九龍城砦」です。
写真や映画、小説などで度々登場する迷宮城砦は私にとって空想の中だけの存在でしたが、じつはこの九龍城砦を再現したアミューズメントパークが日本の川崎にあるのです。
ウエアハウス川崎、通称「電脳九龍城」。
以前から存在は知っていたので「近くに行ったら寄りたいなぁ」と思っていたのですが、なんと今年11月中旬に閉店してしまうそうなんです!
ならば早く行かねば!と言うことで急遽出かけてきました。
そこは私の空想を超えるほどの九龍城砦でした!
九龍城砦(くーろんじょうさい)とは
Edit of Image:19890327hk.jpg by Stevage
引用:Wikipedia –
かつて香港の九龍地区に作られた巨大なスラム街、九龍城砦(九龍寨城-Gaulungsingzaai)。
現在はその建物も取り壊され、跡地に九龍寨城公園ができています。
香港は19世以降イギリスの統治下にありましたが、九龍城砦のあった地域は例外的に清の飛び地となっていた経緯があります。地理的な環境から長らく事実上どこの国にも属さない無政府の地であった九龍地区には、中華人民共和国の樹立後に本土から多くの移民が流入し、バラックの増築を重ねいつしか巨大な城のようなスラムが出来上がったのです。これが、アジア最大のスラムと呼ばれた「九龍城砦」です。
多い時には3万人以上の人々がひしめき合って暮らしていたというのですから、超過密地区。
さらに九龍城砦はその建物群自体が一つの街として機能しており、そこには様々な生業が存在していました。学校や美容院など生活に必要なものはもちろん、政府の力の及ばない不管理地帯はあらゆる犯罪の巣窟でもありました。この様な規模や環境から、いつしか九龍城砦は一度入ったら二度と外には出られない「東洋の魔窟」と呼ばれるようになり、決して近づいてはならない場所として認識されるようになっていったのです。
しかし時代が進み1994年に九龍城砦は取り壊され、その跡地には九龍寨城公園がつくられました。10年以上前にバックパッカーをしていた私が訪れた時は、広々とした公園で太極拳やジョギングをする地元民や観光客の姿がちらほらと見受けられました。広大な敷地内はひと気がまばらで、香港市街の喧騒から隔離された妙に静かな場所だなと感じた記憶があります。
こんな場所に3万人もの住居者が暮らしていたと想像するのは難しかったですね。
時代に翻弄され突如出現した夢か幻のような場所「九龍城砦」。それが、なんと日本の川崎にあるというのですから、一度は行ってみたいと思っていたのです。
ウエアハウス川崎(通称:電脳九龍城)
京急川崎駅からは徒歩10分少々。
JR線の川崎駅からはもう少し近いですね。
川崎を訪れるのは久しぶり。一昔前のイメージとは違い、JR川崎の駅前には新しい商業施設やお店が並び何だか小ざっぱりとした雰囲気になっていました。折角なので街をぶらりと歩きながら目的地を目指します。
タイル張りがおしゃれなクラブチッタ周辺を抜け大きな通りを渡ると、ビルの合間に何やら周囲と似つかわしい風貌の建物がゾゾゾっと姿を現しました。
これが電脳九龍城砦の呼び名で親しまれてきたアミューズメントパーク「ウエアハウス川崎」です。
近づいてみるとさらにゾゾゾ感が…。
建物に足を踏み入れる事を躊躇ってしまう雰囲気がすでにリアル感を演出しています。
噂には聞いていましたが、本当に凝った作り。
果たして無事に出てこれるのか。
意を決し、いざ入城!!
電脳九龍城の中は凄かった…
どこが入り口なのかと、近づいてみると扉が開きました。
「電脳九龍城」の文字。ここで合っていたようです…ほっ。
しかしそれにしても凄い。
この入り口を見て引き返す人もいたのでは?と言うほどの凄み。
ちなみに、「大人のアミューズメントパーク」を謳っているウエアハウス川崎は、18歳以上でないと入店することができません。ただ入り口からして、子供向けではないという事はわかります…。
恐る恐る真っ赤な入口に足を進めると「プシュー!」という音と共に扉が開きました。
さあ、いざ九龍城砦内部へ入ります。
いきなりタイムスリップ!?
中に入ると、騒がしい広東語が聞こえてきました。
どうやら窓の向こうにいる住人達の会話のようです。
気がつくと私は薄汚い雑居ビルの通路を歩いていました。
どうやら九龍城砦にタイムスリップしてしまったようです。
迷宮に迷い込んでしまった私。
明かりに吸い寄せられる虫のように、ネオンの光を求めて通路を歩いてゆくとエレベーターらしき扉を見つけました。上った先がマフィアの事務所だったらどうしよう…。
辺りを見渡すと、後ろにエスカレーターもあったのでソソクサそちらに乗り2Fへ上がります。
いざ2Fへ
増築を重ね積み上げられたバラック郡である九龍城砦の雰囲気そのものなのでしょうか。
今にも住民が窓を開け出てきそうな気配すら感じます。
壁に近づいてよく見ると、張り巡らされた無数の配線や何やら郵便受けのようなものが。
住民のものでしょうか?
窓の上に取り付けられている換気扇は、回っているものと、壊れたためか風によってユラリユラリと動いているもの。
今にも油っぽい中華料理の匂いが漂って来そうです。
壁一面には張り紙が。
「淋病」「梅毒」の名医に、「瞬速豊胸」など。医者まで居たのでしょうか?
ちょっとトイレに…。
まさか、ここまで再現するとは。
用を足していても気が気でない…。
ついついお財布の安否を気にしてしまいます。
ただすごく汚い風ですが、きちんと掃除はしてある感じでした。
はっ、ここはゲームセンターだった…
周りをみるとゲーム機が配置されており、ここがゲームセンターなのだと言う事を思い出させてくれました。
周辺に置いてあるレトロゲーム機が妙に空間にマッチしています。
九龍でダンスゲーム。なんとも不思議な感覚。
私は一体どこにいるのだろうかと考えてしまうほど、作りが精巧。
駐車場側からの入口は更に電脳感
車や自転車で来たお客さんは裏手から入場する感じになるみたいです。
近づくと太極図の扉が開きます。
うわぁ。電脳感が半端ない。
さらば電脳九龍城
あぁ、九龍城。恐るべし。
完全にアジアの喧騒に飲まれてしまいました。
もう今すぐにでもバックパックを背負って旅に出たい気分です。
つい時間を忘れて長居してしまいました。
出口はどこか?と、とりあえず1Fまで下って行くと。
窓越しの美女の寝姿にどきりっ。
はあ、やっと出口が見つかった…。
まとめ
実物の再現性につてはさて置き、アジアの喧騒を思わせる他に例のない独特な雰囲気のあるゲームセンターは居心地も良かったです。
レイアウトの部材はエイジング加工を施し当時の古びた感じを再現していますし、資材やゴミなどは現地から空輸してもってきたものを使っていたり、古ぼけた張り紙なんかも手作りで制作したというのですから恐れ入ります。個人的には、こんなに細部まで作り込んだ空間を取り壊してしまうのは何とももったいない感じがします。
実際に私が訪問した際には外国人観光客と思われる方の姿も多く見られました。
海外からわざわざ見に来るのですから、それなりの価値はあると思うのですがね。
いやぁ、もったいない。