カラーシャの谷を後にした私たちはが目指したのはパキスタン南部の都市カラチ。
サッカーW杯アジア予選の試合を見るためにオマーンに向かうフライトを予約した私たちは、1800kmの距離を2日でバス移動!
待っていたのは、いままで溜めていた汗が一気に吹き出すほどの灼熱の大地でした。
ペシャワール
朝にチトラールを出発したワゴンはロワライ峠を超え南にあるペシャワールをめざします。
ロワライ峠は長い九十九折の山道、頻繁に崖崩れも発生する難所です。
この日の運転手は親方を助手席に乗せた若い新人ドライバー。緊張した面持ちでハンドルを握りしめ、ゆっくりゆっくりと山を下ってゆきます。
安全運転を心がけてくれたおかげで事故もなく無事にペシャワールに辿り着くことができましたが、到着したのは0時を回りそうな真夜中。事故がなくて何よりですが、とにかくヘトヘトなのでバスターミナルで軽めに食事をとり、近くのホテルへチェックイン。翌朝は早くからペシャワールを散策しつつ、マスカットへ向かうエアチケットを予約しなくてはなりません。
ペシャワールの街は大きな街でした。
チトラールに到着した際に感じた街の大きさは一体何だったのだろうかというほど、チトラールとは比べ物にならないほど大きい街です。
それもそのはず、仏教全盛期クシャーナ朝・カニシカ王の時代からガンダーラ地方の中心都市として繁栄してきたペシャワール。その後イスラム教へ時代が進みますが、当時からの歴史的な建物があちらこちらに見受けられる歴史の感じる街なのでした。
ストリートごとに専門店が集まるバザールには多くの商店が軒を連ね、活気に溢れています。町歩きをしたら何とも楽しそうな街です。
そして、やはり街にはヒゲおじさんの姿が目立ちます。
時折見かける女性は皆ブルカと呼ばれるヴェールですっぽりと顔を覆い隠しています。
ここから西に50kmも進めばカイバル峠があり、その先はアフガニスタンのジャラーラバードへと道が続いています。アフガニスタンから出稼ぎにきている人も多く、このような地理的位置にあるペシャワールはパキスタン国内でも特に宗教色の強い地域のようです。色濃いイスラムの雰囲気を味わえる何とも面白い街なのですが、まずは旅先の手配を進めねばなりまません。
ネット屋でオマーン行きのエアチケットを探したのですが、残念ながら最寄りのペシャワールの空港からは試合に間に合うチケットが満席。南部のカラチ発であれば空席があったのですが、2日後のPM発のフライト。すぐさま身支度を整えカラチ行きのバスに乗り込むことになりました。
そういうことで、残念ながら楽しみにしていた町歩きはできず、ネット屋からの帰り道に買えた唯一のお土産がこれ。
ペシャワリーナイフです。
綺麗なシェイプの効いた可愛い折りたたみのナイフです。
折りたたむと結構コンパクトになるので旅中にも活躍していました。パキスタン国旗の刻印や木製の味のある持ち手がなんともいい感じ。ちょっと錆びちゃいましたが、いまでもアウトドアに活躍しています。
さて、後ろ髪を引かれながらもペシャワールの街とはお別れです。
当時ババジと呼ばれるおじさんが銃やハシシの製造工場や密輸バザールなんかを案内してくれる通称「ババジツアー」というものが旅人の間でも話題だったのですが、残念ながら時間が取れず足早にこのエキゾチックタウン・ペシャワールを後にすることとなりました。
カラチ
砂漠をひた走る24時間のバスの旅
AM11:00。
カラチに向けて24時間耐久バスの出発です!
普段は節約のためにエアコン無しの格安バスを利用していた私ですが、今回ばかりは長時間のバス移動ということでエアコン付きのデラックスバスに乗り込みます。
エアコン付きならばヌクヌク…。
じつは私たちが旅していた6月のパキスタンは一年の中でもっとも気温が上がる月。
北部に近いペシャワールは意外にも気温が高く、6月の平均気温は40度超え。過去には50度を記録したこともあります。
ちなみに南部カラチの方が涼しく、6月の平均気温は33度。
これは海からの涼しい風が吹き込むおかげだそうです。
そんな猛暑の中、エアコン付きのデラックスバスは快適に旅を進めるのです。
エアコンって快適…と移動続きの疲れから心地よく眠りに陥りました。
しばらくして寝苦しさから目を覚ますと、何やらもわ〜っとした車内。
誰か窓でも開けているのかと思ったのですが、このバス窓が開かない作り。
停車して出入り口から外気が入ってきているかと思ったものの、ただ今走行中。
はて?
エアコンが効いていない…?
とても蒸し暑いです。
エアコンが壊れたそうです。
せめて、窓でも開け…られない…。
………。
ラクダが1匹、ラクダが2匹…。
砂漠の道で荷を引くラクダの姿を望楼とした意識の中、いったい何匹見送ったことでしょう。24時間を耐え抜いた私たちは無事にカラチ郊外のバスターミナルへ到着しました。
すぐさま売店へ駆け込みペプシを購入し一気に飲み干したのですが、この1本が人生で一番美味いペプシであったのは言うまでもありません。
暑い!活気溢れるカラチの街
バスターミナルから宿の集まるタメル地区と言う場所へ移動しました。
本日の宿も見つかり、シャワーを浴びてリフレッシュしたのですが、外出した途端に汗でビッショリです。
ペシャワールよりは涼しいかと思っていたカラチですが、常夏のように暑い。
随分と南へ下ってきたことを改めて認識しました。
1800kmも走ってきたのですからそれもそのはず。エジプトのカイロよりも緯度が低いのです。
カラチはアラビア海に面する地理を生かし海の交易で栄えてきた貿易港。
19世紀イギリス植民地時代に急速に発展を遂げ、1947年にパキスタンが独立した際には首都が置かれたのがここカラチでした。現在はイスラマバードに首都が移りましたが今なお商業・金融の中心地である世界有数のメガシティーなのですね。
街中は活気に満ち、南国の日差しがさらにその活力を後押ししているかのようです。
さあ、暑さにやられている場合ではありません。大急ぎでパキスタン土産を調達。
なにせ翌日のエアアラビアのフライトで一路オマーンの隣国、UAEのドバイへ向かうのですから。
バイバイ、パキスタン
こうして、1ヶ月ほど旅した初めてのイスラムの国パキスタンを慌ただしく後にしたのでした。
思い返すと、過酷な移動の場面がすぐに頭を過りますが、それにも増して楽しかったですし、また来たいと思える場所や出会いがたくさんありました。
イスラムの国ってどんなものだろうかと不安と期待を持って訪れたパキスタンでしたが、そんな不安はなんのその期待をも遥かに超えるほど素晴らしい国でしたよ。
先日パキスタン人の旦那さんを持つ知人から聞いた話では、カリマバード(フンザ)もだいぶ様変わりしたようです。最近は私が旅した10年前には見かけることがなかった国内の旅行者が増えたようで、宿泊施設があちこちにできて夜には電飾がピカピカと輝くようになったというのですから驚きです。ロウソクで夕食を取っていた10年前が懐かしいですが、それも時の流れ。それでいても今尚多くの旅人を引き寄せるのは、フンザの大自然の魅力なのでしょうね。
ちなみに現在は交通インフラもだいぶ整備されたようです。都市部にはメトロが走ったり、長距離バスのグレードもかなり良いものが選べるみたいですね。エアコンが壊れるようなバスに出会うことはそうない事だと思いますよ。
またいつの日か必ず訪れたい素敵な場所です。
※2008年の情報です