「食べると酔っ払う?」
マルーラという植物を知っていますか?
アフリカ原産の不思議な樹木。食べると象すら陶酔してしまうという魅惑の果実が実るそうなんです。
珍しい植物と聞くとつい育てたくなってしまう性分ゆえ、先日入手した種を発芽させてみることにしました。
今回は発芽方法、発芽した苗の育苗の様子を振り返ってみようと思います。
まずは種の入手と発芽の方法から。
今は輸入禁止となった幻の果実マルーラ
マルーラ?
はて、どんな植物なんだろう。
マルーラはアフリカ原産のウルシ科の常緑高木で、マンゴーやカシューナッツ、ピスタチオなどの仲間です。樹高は15mほどの大きさまで成長する立派な木。雌雄異株の植物で、果実を実らせるのは雌木のみ。日本国内で実を採ろうと思っても雌雄が揃っていないとダメみたいですね。
クルミくらいの大きさに成長する実は果肉を食用とするほか、種の中の仁は長期保存が可能なためアフリカでは昔から食用としても利用されていていました。また酸化が遅い良質な植物油が絞れることもあり、現地の人々から重宝されてきた植物の一つのようです。
ただ、マルーラの実の果肉は発酵しやすく熟すとアルコール分を含むため実を食べると酔っ払ってしまいます。象をはじめ野生の動物達も好んでこの実を食べますが皆酔っ払います。象ですら大量に食べるとふらふらと千鳥足になってしまうという噂。
また原産国の南アフリカでは、ワインを作るのと同様に圧搾し発酵させてマルーラの果実酒も製造しています。この果実酒を加工してリキュールにしたのが「アマルーラ・クリーム」。ロックやカクテル、アイスクリームのソースなど楽しみ方も様々。
ちなみに、マルーラの果実は2020年1月末から輸入禁止になっています。
マルーラの実にはアフリカマンゴウミバエ(Ceratitis cosyra)という寄生虫が付いていることがあり、国内への侵入を防ぐためとのこと。この寄生虫はマルーラ以外にマンゴーやアボカド、モモなども好み、国内に侵入して繁殖してしまうと多方面に作物被害が懸念されるそうです。
寄生虫の心配がない種子や苗に規制はかかっていないので、2021年5月現在輸入での入手は可能みたいです。
うむ、摩訶不思議な南国の木の実マルーラ。
マルーラの発芽方法(栽培開始3月20日)
さて種を入手したので早速発芽させてみたいと思います。
種の大きさは2cmほど。
結構大きい種です。
表面はザラザラ、カサカサとしていましたが、爪でこするとこそげ取ることが可能でしたので取り除いてみました。
上の画像の左側が表層をこそげ取って水洗いしたものです。
この表層が発芽の役に立つものなのか、不要なものなのかわからなかったのでとりあえず半分の種はそのままの状態にして発芽の準備を進めてみることにします。
発芽適温は25〜30℃。
栽培(種まき)を始めたのが3月なので、マルーラにはまだまだ寒い季節。
湿らせたキッチンペーパーで包んで乾かないように適度な水分を保ち、日中は日当たりの良い窓際、夜は風呂の蓋の上にのせ発芽を待ちます。
植物の種は大体そうですが、「今発芽しても大丈夫だよ」という状況を伝えてあげる必要があります。
適した気温だったり、十分な水分だったりといった情報です。
さらにヒヤシンスなど球根類のように、一度冬の寒さ(冷蔵庫)に当てて寒い時期が終わってもう芽を出しても大丈夫だということを伝えなくては芽を出さないものも多くあります。
マルーラに関しても念のため、発芽前に冷蔵庫で1週間寒さを経験させてから始めた方が発芽率が上がりそうな気がします。
またアフリカ南部の乾燥気味な大地で育つ植物なので乾燥には強そうです。
仁が入る殻は分厚くとても硬いので、殻で吸収した水分をある程度溜め込めるような種の作りになっているみたいですね。
種の蓋が取れて穴が空いた(3月31日)
初めの1週間は何も変化が見られませんでしたが、すばらくすると種の一部が膨らんでいる個体を発見しました。
どうやら取れそうなので剥がしてみたところ、種の中に仁が見えました。
この穴は種の片側に2箇所あり、おそらく発芽した芽と根が出てくるような作りになっているみたい。
さらに数日後、穴から芽が出てきたようです。
おお、それっぽい。
外気が暖かくなってきたので育苗ポッドに直接蒔いて発芽を待ちます。
4月、暖かくなってきたとはいえ外気温は20℃前後。
まだ簡易温室などで地温を高める必要があります。
密閉してしまうと高温になってしまうので、蓋を開閉して適温を調整します。
ついに発芽した!
4月23日。
ついに発芽しました!(右の方です。左の赤いポッドはモリンガの芽)
茎が太い!
なんとも存在感満点な大きな芽が生えましたね。
それにしても随分端っこの方から出ました。
この後に気がつきましたが、今回のような育苗ポッドのサイズでは少々小さいようです。根が直根で地上部と同じくらい伸びているので地下はギュウギュウです。もう少し大きなもので種まきをすることをオススメします。
まとめ
一番早い芽が発芽するまで約1ヶ月。
長かった…。
実際のところ、寒い時期に簡易温室で加温調整をしたいたので、常に適温に合わせることは出来ませんでした。おそらくだいぶ低温の状態もあったはず。ただ大きな種ゆえ生命力は強かったのだと思います。不安定な状態でも発芽はしました。
その後調べたところ、発芽に適した季節は4〜7月と情報がありました。
ある程度気温が上がり自然に適温帯に入る時期が発芽には好ましいです。早ければ1〜2週間で発芽はするみたいですよ。
続いて次回は発芽後の育苗についてまとめてみます。