写真コンクールに応募する!
写真を作品展に出すことになった!
そんな時は自分で納得のいく良いプリントをしたいですよね。
現在普及しているA4サイズの家庭用プリンタでも十分きれいにプリントすることはできるのですが、
「ちょっと大きなサイズをプリントしたい」
「せっかくならプロ並みにもっときれいにプリントしたい」
とは思いませんか?
ちょっとお値段は張りますがA3やA2サイズまでプリントできるインクジェットプリンタを検討してみるのもひとつ。
今回はエプソンとキャノンの大判プリントできるインクジェットプリンタの比較をしてみました。
写真業界にいた私なりに、実際の使い勝手や色の再現性の違い、また使い方に合ったおすすめの機種を考えてみたいと思います。
対象機種
Canon
PRO-10S(顔料インク/〜A3ノビ)
PRO-100S(染料インク/〜A3ノビ)
PRO-1000(顔料インク/〜A2ノビ)
EPSON
SC-PX5VⅡ(顔料インク/〜A3ノビ)
SC-PX7VⅡ(染料インク/〜A3ノビ)
SC-PX3V(顔料インク/〜A2ノビ)
Canon
EPSON
A4プリンタの比較もしているので、よかったら過去の記事もご参照ください↓
どうやって選ぶ?
プリンタを買うということは、写真をプリントし見る(見せる)ということです。
最終的にいったい「どのように見せたいのか」をイメージし、その表現に近づけられる機種を選びたいですね。
まずは何が違うのかを知っておきたいところ。
それぞれの機種に特性はありますので、
そこを踏まえた上で自分の作品イメージを叶えてくれる機種を選ぶようにすれば、しっくりとくるのではないかと思います。
作品ありきで、プリンタを選んでみたいと思います。
インクの違いで選ぶ
- インク種類(染料or顔料)
- インク数(グレー系、ライト系、特色)
- クロムオプティマイザ(グロスオプティマイザ)
写真プリントは紙などのメディアにプリントし光源下で鑑賞をします。
デジタル画面上ではRGBの光を自ら発しているのに対し、写真は光の反射によって色を認識し見ることができます。
そのためプリントされた写真は環境下で見え方も変わってきますし、同じ環境下であっても光を受ける紙やインクの種類によっても変化してきます。
まずはインクの種類による再現性の違いを比べてみましょう。
インク種類(染料インクと顔料インクの違い)
インクには染料インクと顔料インクがあります。
一般的に染料インクは発色性や光沢感があり、見た目が綺麗に仕上がると言われています。
一方顔料インクは見た目のインパクトは染料に劣りますが、色の安定性や保存の面において優位があると言われています。そのためプロカメラマンやプリンター(プリントをする人)の多くは顔料インクのプリンタを使用しています。
イメージとしては、
染料インクは、溶剤に溶けている着色剤が「紙に浸透する」
顔料インクは、溶剤に混ぜた細かな色粒が「紙に付着する」
といった感じでしょうか。
染料インクの特徴
一般的に広く販売されている家庭用のプリンタはほぼこの染料インクを使用しています。
メリットは発色が良く再現性が良いという点。
インクが紙の受容層に「染込む」ため、光沢紙の紙面をフラットな状態で保ち紙本来の光沢感がいかせます。
また、用紙の種類によっては浸透速度が速いため「プリント後に触ってかすれてしまった」なんてことが起こりにくいです。
使い勝手の面では、ノズルつまりが発生しにくいのも特徴です。
デメリットとしては、
水による滲みや、太陽光・オゾンによる色あせが起こりやすい点です。
また、色の変動が大きいということ。
つまりレタッチ後にすぐに色の確認補正ができないという点です。
染料インクは紙に染込んだ後、完全に乾燥するまでの間は色が変化し続けています。
プリント直後に見た色合いと、1時間後に見た色合いとでは全く違うことがよくあります。
常温で完全に色が落ち着くまでは2日以上はかかります。
しっかりと乾燥させたプリントはプリント直後と比べても明らかに濃く鮮やかな色合いになっています。
「染料は黒が締まらない」という声も聞きますが、この乾燥がしっかりとできていない直後の写真を比較していることも1つの原因ではと考えています。
またプリント直後の写真はプリント面を露出もしくは普通紙などで覆い、水分を蒸発できる状況に保管しておくことが理想です。
現在はRC紙(レジンコート紙)の用紙が大半ですので、プリント後の写真同士を重ねている場合、水分の逃げ場が確保できず十分な乾燥が行えない場合がありますので乾燥方法については注意が必要です。
メリット
- 発色が良い(彩度が高く顔料では再現できない高彩度の色域を再現可能)
- 黒の締まりが良い
- 光沢感がある(インクは受容層内部へ滲みこむ為、光沢紙ではフラットな紙面を維持でき紙本来の光沢感を発揮可能)
- プリント速度が早い
デメリット
- 保存性(退色性)において顔料インクに劣る
- 色が落ち着くまで時間がかかる(インクが乾くまでに時間を要す)
- マット系用紙では色沈みする(光沢紙と比べ鮮やかな色が出ない)
向いている写真
- 湖面や水滴などの光沢感を光沢紙で再現したい写真
- 透明感のある水中写真
- 夜景などのコントラストのある写真
- 青い海やビビットな色彩を高彩度の発色のまま再現したい写真
顔料インクの特徴
保存性が良いのが一番の特徴です。
銀塩プリントやプラチナプリントは実際に100年、500年と保存の実績が残っています。
インクジェットプリントは普及してまだ30年と年数が浅いため、保存性においては銀塩やプラチナプのような確固たる実績による保証がありません。
しかし各メーカでは日々保存性のあるインクを開発し、加速実験によってその保証を高めています。その結果が今日の顔料インクの保存性へとつながっています。
国内ではまだ件数が少ないですが、海外ではインクジェットプリントの写真販売は多くなっています。それだけ顔料インクの保存性能が上がり信頼が出てきた証拠です。
また、プリント後の色の変動が少ないため色合わせがしやすいという利点もあります。
作品を作り込む際、プリント後にすぐに色の確認をしたいですよね。
顔料インクは紙に染込むと言うよりは定着するため、紙の種類を選ばずにプリントできる利点がある一方、吸収性の低い安価な用紙の場合には顔料粒子を含んだ溶剤が乾燥し定着するまでは強くこすったりすると剥がれてしまう可能性があります。
メリット
- 保存性(退色性)に優れる
- 環境下による色の見え方の違いが出にくい
- 用紙種類の差によるにじみの発生が少ない
- 用紙を選ばない(色の再現が安定している)
- 色に落ち着きがある
- 階調豊かなモノクロ再現
- プリント後の色の変化が少なく、レタッチなど色の確認作業が容易・スムーズ
デメリット
- 耐擦性が低い(用紙によっては擦れによるインク剥がれがおこる)
- プリント速度が遅い
- 光沢感はインク自体の光沢感(高光沢用紙にプリントするとインクの光沢が劣りムラが起こる可能性がある)
向いている写真
- モノクロ写真
- 販売目的や長期展示・保管する写真
- レタッチなど色の確認を必要とし、作品を作り込んでいく写真
- 光沢紙はもちろん、マット系の用紙を使う場合にも
インク数
やはり、インク数が多いほど色の再現性は良くなります。
グレー系やライト系、オレンジやブルーなどの補完色インクはきれいなグラデーションを可能にし階調の再現性を向上させることができます。
またレッドやブルーなどの特色インクは通常のCMYK系インクだけでは難しい色域を補完しより深く鮮やかな再現が可能になります。
またプリンタの機種によって搭載するインク色は若干違い、モノクロを得意とする機種、カラーを得意とする機種などを選べます。
たとえば、鮮やかなカラー表現を得意とするCanon PRO-100S(染料プリンタ)やEPSON SC-PX7VⅡ(顔料プリンタ)など。
カラーやモノクロの階調表現を得意とするCanon PRO-10S、PRO-1000やSC-PX5VⅡ、SC-PX3Vなど。
クロムオプティマイザー(グロスオプティマイザ)
Canonならばクロマオプティマイザー(CO)、EPSONならばグロスオプティマイザ(GO)と呼ばれる透明な樹脂コーティングインクのことです。
optimize(オプティマイズ)とは「良さを最大限に引き出す」ことです。
クロム(クロマ)オプティマイザインクとは色味を最大限に引き出すインクのことです。
原理としては顔料インクの乗っている部分とそうでない部分にできる凸凹を埋め平滑にすることで、光の乱反射を抑えることが可能になります。
乱反射がないということは、プリントそのものの光がきれいに目に返ってくるということです。インク自体の本来の色味が最大限に引き出されるのです。
またハイライト部分においては、インクが載っている部分とそうでない紙地の部分とで光沢感が違い見え方に違和感を感じることがありましたが、オプティマイザインクで全面的に補完されることによりその見え方の違和感が埋まります。
一方のデメリットとしては、インクが増えるためコストが上がります。
またハイライトや白色部分が多い画像の場合、通常ならば使用しない白部分(インクの載らない部分)にもグロスコーティングしますので、プリント時間が余計にかかります。
しかし安心してください。
オプティマイザインクの使用はプリンタドライバでON/OFFの設定が選べます。
まとめると以下のような利点があります。
メリット
- 鮮やかさが増す
- 黒の濃度が上がる
- 平滑性が上がる(光沢感が増す)
- 保存性が上がる
- インクの載っている部分とそうでない部分との光沢感の差がでない
デメリット
- インクコストが上がる
- プリント時間が長くなる
- 紙本来の素材感は変化する
インク自体の性能
それぞの機種は旧モデルと比べ遥かにインク自体の性能も向上しているようです。
インク自体の性能が向上したことで、黒濃度や再現色域の拡張など色自体の改良も見られるようです。
また色インクを補完する形で一部機種に採用されているグロスオプティマイザ(クロマオプティマイザー)と相まって、プリント自体の見え方にも変化がみられるようです。
特にモノクロ画像などでは作品展示の際に気になっていたブロンジング現象。
見る角度や光の具合で色が変化して見えたり、モノクロ画像にあるはずのない「色」が見えてしまう現象です。
これもグロスオプティマイザ(クロマオプティマイザー)の効果で、軽減されるようです。どのような光源下でも影響されにくくなったことは、作家にとってはありがたい性能です。
簡単にまとめますと、
- 黒インクの濃度向上
- マゼンタインクの色域拡張
- 滑らかなグラデーション再現
- ブロンジングの低減
などなど。
実際に開発をしているわけではありませんので、インク自体の詳しいことはそれ程わかりませんが、どちらのメーカーの機種もプロが納得する素晴らしい性能を持ち合わせているのは確かなことのようです。
エプソン、キャノンの両サイトでもその性能の向上についてはしっかりと説明がされていますのでそちらを閲覧していただければわかりやすいと思います。
Canon 特設サイト
EPSON 特設サイト
プリント可能サイズで選ぶ
- A3ノビ 329mmx483mm
- A2ノビ 432mmx610mm
- ロール ~432mm幅
サイズ選択は3つ。
A3ノビかA2ノビかロールなります。
EPSONの機種はロールホルダが付属しているので、簡単にロール紙をセットでき長尺物のプリントも可能です。A2ノビ対応プリンタなら17インチ(432mm幅)のロールがセットできるので作品の表現の幅もぐんと広がりますね。
ちなみに、ホルダーがなくてもロール紙(または長い用紙)を送れるように工夫すれば、どんなプリンタでも長尺プリントは可能です。
操作性の違いで選ぶ
自分が使うのならば使い勝手が良いものがいいですよね。
- 操作パネル付き
- ブラックインクの切り替え
顔料インクプリンタに限ったことではありますが、
エプソンの機種はフォトブラックからマットブラックへの切り替えを都度行うのに対し、
キヤノンの機種は切り替えることなく、すぐに違う種類のブラックインクの使用が可能です。
切り替えを行う際にはノズルヘッドに残った前の黒インクを捨てるためインクの使用量も増えます。フォトブラックとマットブラックの切り替えを頻繁に行うとカートリッジ交換も結構早かったりします。
キヤノンの機種はそれぞれ単独のノズルがあるので、切り替えることなくすぐに違った種類の黒インクを使用することができるのですね。
「光沢紙もマット紙も両方使う」といったように、
切り替えを頻繁に行う人は断然キヤノンの機種が楽ですね。
総合評価
普段は光沢紙を使い、展示や保存期間を気にせずに、光沢感や透明感・とにかく濃い黒・鮮やかな発色を出したい、とにかくプリントスピードが速いのが良い!という場合には、染料プリンタがオススメです。
それ以外ならば基本的には顔料プリンタがオススメです。
ちなみにエプソンの場合はプロセレクションに染料プリンタはラインアップしていません。
圧倒的に保存に優れているのは顔料プリンタです。
また、染料プリンタに敵わないとされていた透明感や黒濃度ですが、インクの進化や「クロマオプティマイザー(クロムオプィマイザ)」インクの採用によってだいぶ補完されてきたようです。用紙表面の平滑性を高めることで、光沢の均一性と暗部の引き締めが格段に高まっています。
再現色域についても、特に搭載インク数の多い大判機種では染料プリンタに劣らぬ再現領域を可能にしています。
そのためあえて染料プリンタを選ぶこともないのではないのかと感じます。
私のチョイス
個人的にはCanon PIXUS PRO-10Sが欲しいです。
光沢紙よりも半光沢紙やマット紙が好きな私。
そのため紙を選ばない顔料プリンタのほうが使いやすいのです。
私はPRO-10Sを実際に使用したことはないのですが、
当時仕事で目にしていた前機種のPRO-10の頃から、EPSON SC-PX5VⅡと比べても黒が濃いな~っと感じていました。
プリンタ売り場などに置いてあるプリントサンプルなどを見ても、
やはりPRO-10Sの黒は相変わらずかなり濃いのですよね。
あと実はCanonの顔料プリンタはプリント速度が遅い!というイメージがとても強かったのです。
2代前の機種PIXUS Pro9500 MarkIIも使用していたのですが、これがとにかくプリント速度が遅かったのです。
PRO-10シリーズになってからはその速度も改善され、EPSONの同位機種と比べてもさほど気にならないレベルになっていたのもナイスでした。
そのため、今買えるならば「PRO-10S」が欲しいですね…。
まとめ
個人的な考えをまとめてみましたが、色や質感の好みや感じ方は人それぞれです。
ギャラリーやプリンタ売り場で実際のプリントを見たり、メーカーのショールームやデモスペースへ行って実際に機種を試してみたり、実際に出力物を見てしっくりとくる機種を選ぶのがいいと思います。
ギャラリー&ショールーム
各メーカーのギャラリーやショールーム。
実際に足を運んで自分の目で確認するのが一番ですね。
Canon
EPSON
プリントラボ・プリントサービス
それでも、
「ちょっと高くてプリンタに手が出ない」
「自分できれいにプリントする自信がない」
「プリントと一緒にパネル張りや額装などの加工もしたい」
そんな人は、プリントラボやプリントサービスを利用するのもひとつです。
なかにはプリントから額装までできるサービスを提供するところもあります。
エプサイト・プライベートラボ
予約制で最新機種が自由に使用できるエプソンのプリントラボ。
カラーマネジメントの整ったプリント環境で大判のプリンタまで使用できます。
ピクトリコプリント工房
プロも利用するハイクオリティな写真プリントサービス。
プリントできる用紙はピクトリコの用紙に限定されますが、高画質インクジェット用紙メーカだけにラインアップは豊富。鏡面光沢からマット系の用紙まで、質感や紙白の違う十数種類の用紙からプリントを選べます。
加工は裏打ちから木製パネルや額装まで、こちらも豊富なバリエーション。
プリントだけならA4サイズで726円から高画質でハイクオリティーなプロのプリントを体験できます。