【パキスタン/フンザ】イスラム圏を旅する.3 ~神々の回廊、パスー氷河トレッキング~

パキスタンフンザ_風の谷のナウシカ パキスタン

パキスタンマップ_パスー

フンザのカリマバードに滞在中2泊3日のトレッキングへ出かけました。
訪れたのはカリマバードからフンザ川を北に50kmほど遡った小さな村。
中国との国境も近いパスー村というところ。

目的は氷河トレッキングです!

※2008年の情報です

パキスタンフンザ_風の谷のナウシカ

 

【パキスタン/イスラマバード】イスラム圏を旅する.1~インド国境を越えパキスタンへ入国~
映画「風の谷のナウシカ」が放映される度に思い起こされる場所があります。それは中東パキスタン北部のフンザという山岳地域。 10年前に私が旅した中東は、それはそれは素敵なところだったのです。こんな時代ですのでたまには良い情報でもお届けできればと思います。今回はフンザまでの道のり。インド国境からパキスタンの首都イスラマバードまでです。

 

【パキスタン/フンザ】イスラム圏を旅する.2 ~旅人にやさしいシルクロードの山の民~
ビザ発行が難航しイランの代わりに向かったのはパキスタン北部の山岳地帯フンザ。首都イスラマバードからバスを乗り継ぎ2日。カラコルムハイウェイを登り標高2500mの高地に位置するフンザの中心地カリマバードという町。K2はじめ、ラカポシやウルタルといった7000m級の名峰に囲まれたそこは、まさに風の谷。トレッキングハイキング

 

のんびり小さな「パスー村」

パキスタンフンザ_風の谷のナウシカ

氷河トレッキングのベース地となるパスー村までは、幹線道路カラコルムハイウェイ(KKH)を北に50Km。1時間ほどの道のりです。フンザの中心地カリマバードの町からカラコルムハイウェイ沿いの町アリアバードまで歩いて下り、まずは乗り合いバンを見つけます。

乗り合いバンに揺られ到着したパスー村は小さな村でした。放牧や農業をして慎ましく生活をする人々が暮らす集落。中国のカシュガルから国境を越えて伸びるカラコルムハイウェイの沿線にあるため、小さな村でも一応宿泊施設があったりします。中国側から国境を超えてやってくる旅行者の大半はカリマバードやギルギットまで直接向かってしまうので、この村に旅行者の姿は皆無です。ただしトレッキングの地としては魅力があるため、山好きの旅行者は時々やってくるようです。私たちは庭にさくらんぼの木があるPasu Innという小さな宿に宿泊。ちょうどさくらんぼが実る時期らしく食べ放題というおまけ付きで。

辺鄙な土地柄ゆえ夜は当然のように停電になり、ろうそくやヘッドライトで灯をともす生活になります。

漆黒の闇を照らすロウソクの灯りから目を離すと、フンザ川の向こう側にうっすらと山影が見えてきたことに気がつきました。

稜線がはっきりと見え始めたかと思うと、背後から大きな満月が姿を現したのです。

幸運なことにこの日は満月。
空が近いのためか、月は昼間のように明るく私たちを照らしてくれます。

「パスー氷河」へ、いざトレッキング開始

パキスタンフンザ_風の谷のナウシカ

カリマバードの宿に置いてあった旅人ノートに氷河へのルートが記載されていました。情報によると、パスー氷河はパスー村の少し手前にあるようです。カラコルムハイウェイを1kmほど南下すると小川を渡す橋が架かっていて、そこがパスー氷河への登山口とのことでした。

途中ヤギを放牧させている地元のおじいさんに会いました。登山といってもパスー氷河までの道のりは険しい道が続くわけでもなく、地元の人の生活道にもなっている何とものどかな雰囲気が続いています。本当にこの先に氷河などがあるのかと疑問を感じていると、少し先の方に辺りの山肌とは少し違った色合いの壁があることに気がつきました。

近づいてよく見てみると、それは砂で汚れてはいるものの氷の塊。
先ほどまで遡ってきていた川もこの氷の壁の下から流れ出しているようです。

氷河は呆気にとられるほど急に現れました。登山口から登り始めて30分ほど。私の前に広がる壁が全て氷河の終わり。つまりこの壁を登れば氷河が見渡せるということです。

どうにか登れる道はないかとあたりを見渡しますが、氷の壁は険しくリスクを負わずに登れるような道はありません。結局氷河の壁を見た私はここで引き返したのですが、途中で出会った地元のおじさんの話によるとトレッキングルートは私たちの登ったルートの対岸にあるのだそうです。

翌日改め得て対岸から登って行くとすんなり氷河の上にたどり着くことができました。
荒々しい氷河は陽の光を反射して輝き、さらにその奥に白く輝く山々に向かい長く長く続いていました。その壮大な光景はまるで神々の世界へ続く神聖な道。さすがにこれより先は氷河の上、ガイドさんなしでは少々不安のあった私たちはこの光景に満足し氷河を後にしたのでした。

パスー村〜フサニ村 つり橋トレッキング

カリマバードへ戻るついでにお隣のフサニ村まで散歩してみることにしました。
パスー村からは幹線道路沿いで10kmほど南に位置するこれまた小さな村です。

ただカラコルムハイウェイを歩くのもつまらないので、フンザ川を渡り対岸に見える緩やかな傾斜を歩い向かうことにしました。

パスー氷河トレッキングの途中でルートを教えてくれたおじさんが「レストランをやっているからとおいで」とお誘いをいただいていたので、途中にあるおじさんのレストランでご自慢のアプリコットパイをいただきました。杏の産地ということなので。

さて、糖分を摂取した後はトレッキングの再開です。

パキスタンフンザ_風の谷のナウシカ

おじさんのレストランを出て少し歩くとフンザ川が近づいてきました。
上流と言えどフンザ川の幅は広く、対岸まで200m近くあり、対岸に向かうためには途中に渡されたつり橋を利用する必要があります。

最小限の材料で仕上げたつり橋は、至って無駄を削ぎ落としたシンプル作り。
人が渡るために必要最低限の構造で出来上がっています。

川の両岸にワイヤーが渡され、交差するように橋桁がはめ込まれています。
足を置く橋桁は20cm幅くらいの流木が使われ、次の足をおくる橋桁までの間隔は自由度が高く長いところでは1mくらいあります。フンザの人は足が長いのだなと感心します。ところどころ橋桁の抜けた部分もあり、その場合は両サイドのワイヤーを握りしめ足元に渡るワイヤーを綱渡りのように進まなくてはなりません。
複数人で渡ると吊り橋は大きく揺れ、さらに難易度を高めます。

お隣には以前まで使っていた別のつり橋がありました。
すでに朽ち果ててちぎれたワイヤーと数える程の橋桁が無残にぶら下がっており、その光景がさらに緊張感を盛り上げてくれます。

無事に渡り終えた後は、砂漠のように広がる砂の大地を進みます。
荒涼とした大地の先に中継の集落が見えました。
砂漠のような砂地には道らしきものも見当たらず、この先の詳しいルート情報も得ていなかったため、先に見える緑の集落を目指して直進することにしました。

行く手に干上がった川のようなものが見えてきました。
水がないのならば歩いて渡れるであろうと、最短距離を突き進んで行くと、その川はどんどんとスケールを増していくのでした。
遠くに見えていた川のようなものは大地の切れ目に変わり、数十メートルの谷となって現れました。

これは無理だと判断した私たちは、大地の裂け目を迂回し山側を進むことにしたのでした。

遠目に見えていた緑は数件の民家があるほかは畑が広がる小さな集落でした。
畑で農作業をする村人を遠目に通過すると、先ほどとは別の下流側のつり橋がありました。

これを渡れば目的のフサニ村です。

パキスタンフンザ_風の谷のナウシカ

先ほどのつり橋に比べれば丈夫な作りです。
対岸のフサニ村は少しまとまった村人の集まる集落があり利用頻度も多いためでしょう。
今回は景色を堪能しながら渡ることができました。

フサニ村

パキスタン フンザ_風の谷

対岸にあるのが目的地のフサニ村です。
フサニ村は傾斜地に民家が点在しその間には段々畑が広がっています。
吊り橋は集落の下に位置していたため坂道を登っていくことになります。
さすがに高地ということもあり、ゼエハアと息が切れます。

集落に入るとワーっと子供達の声が聞こえてきました。
私たちが登る道の途中には小学校がありそこにいた小学生たちが集まってきたのです。滅多に旅行者がやってくるようなところでもないらしく、鼻の低い東洋人の顔やぶら下げているカメラが物珍しいのかあっという間に取り囲まれてしまいました。
集まってきた子供達の髪色は明るく空のように青い瞳を輝かせています。タジキスタンにも近いこの地は、ほぼ中央アジアなのです。

パキスタン フンザ_風の谷

村を登りカラコルムハイウェイに戻り車をヒッチハイクした私たちはカリマバードへ向かうのですが、途中崖崩れが発生し道が寸断。
せっかくヒッチハイクをした車も渡ることができず結局は対岸にやってきた乗り合いバンに乗り換えカリマバードへ戻ったのでした。

こうして2泊3日の氷河トレッキングは終了。
距離は歩きましたが、ハードな行程は少なく氷河からつり橋までフンザの絶景を堪能できる楽しいトレッキングルートでした。
ちなみに、パスー氷河はカラコルムハイウェイからも遠目に見ることができます。
パスー村へ向かう手前2Kmほどの高台に車をとめれば、登らずとも見れちゃうお手軽さ。

そして氷河トレッキングから戻った数日後、2週間滞在したフンザを後にしたのでした。

当時は今ほど山への興味もなかったため、アレヤコレヤと山行を計画するよりは、のんびりと景色を堪能していることの方が多かった気がします。今思うと贅沢な時間でしたね。

次に向かったのはアフガニスタン国境に接するチトラールの奥地。
異教徒「カラーシャ族」が住む谷『カラーシャバレー』。

 

【パキスタン/パンダール】イスラム圏を旅する.4 ~エメラルドに輝く川沿いのオアシス~
フンザを後にした私は西へ向かったのでした。目指したのはアフガニスタン国境に近いパキスタン北西部のチトラールという街。山岳部を走る路ゆえ峠越えの険しい道のりが続きます。その途中パンダールという小さな村に1泊したのでした。乗換えのいっときの滞在地と考えていたのですが、これがまた何とも心地の良い場所だったもので。トレッキング

 

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